現在51歳の男性です。
18歳の時から地方公務員として31年努めましたが、その間の職は全て、公立学校の事務職員でした。
最終年の収入額は700万円ほどでした。
50歳を期に早期退職しています。
・18歳で学校事務職員デビュー
初級地方公務員は高校卒業レベルで試験を受けることができます。
最初の勤務は町立の小学校でした。
我が県においては、同じ県職員であっても、県庁の他、市町村立の小中学校か、県立の高校、特別支援学校に配属されることがあります。
市町村立小中学校の場合、採用辞令は県庁ではなく、各市町村の役所で受領します。
この辺りがちょっと変則的で、市町村立学校から県立の学校に異動する場合、県職員としての立ち場は変わらないものの、一度退職という扱いになります。
何も分からない、ついこの間まで高校生だったのに、研修期間も無しで、いきなり現場に配属されます。
仕事のことも分からないので、現場で仕事をしながら覚えることになります。
小中学校の場合、学校事務職員は一人しかいないため、仕事のことは近所の学校事務職員の皆さんに電話をかけまくって教えてもらいます。
現在は一週間ほどの初任者研修期間があります。
・職務内容
公立学校の学校事務職員の仕事は実に多岐に渡ります。
基本となるのが給料・手当・旅費の支給方法です。
住居手当・通勤手当・家族の扶養手当などかなり細かい法令規則による書類の整備があります。
非固定型の手当の支払いは月末に取りまとめて各職員に支払うこととなります。
特殊勤務手当と呼ばれる、部活動の指導に係る手当などです。
それに伴って出勤簿を始めとする各帳簿の取り扱い。
次に職員の福利厚生。
厚生年金や健康保険などにかかるもの。
学校の経営管理にかかる費用の支出や、物品の購入。
各種調査の報告。
これはけっこう多いです。
今年度の予算の調整と来年度の予算獲得のための資料作成。
年末近くになると所得税の精算のため職員全員の年末調整の書類を揃えることとなります。
年度末は人事異動があるので、各職員の移換する書類を整備することとなります。
小中学校勤務になると、これだけの業務を全て一人でこなすこととなります。
高校に行くと授業料の徴収業務がありますが、現在は就学支援金という国の制度のため、ほぼ徴収するための作業が無くなっています。
・労務環境
小学校の場合、事務室というものがなく、職員室の副校長(教頭)の隣のデスクで仕事をすることとなります。
人間関係が良くない場合、地獄の様相を呈することとなります。
高校の場合、事務室があり、事務職員も複数配置されるので、やや働きやすい環境と言えます。
また、市町村立の小中学校と県立の高校では予算の規模がまったく違います。
初めて高校に異動してみて、その予算の潤沢さに、1円10円の単位でキリキリしていた以前の小学校との差に驚愕しました。
自分が居住する本県においては、恥ずかしながらごく最近になって事務室にエアコンが配置されたのであり、それまでは真夏のサウナ状態でも我慢して仕事していました。
・思い出
どこの職場でも職員の高齢化が進んでおり、そのため若い時分に小学校で働くと子供たちからやたら注目を浴び、アイドル気分を味わえるでしょう。
仕事で数多くの失敗を繰り返し、そのリカバリーがとてつもなく労力が必要でした。
一番大変だったのは、職員の前の職場での手当認定ミスの後始末で、いわばとばっちりを受けたわけですが、3年分の手当を返還させるというものでした。
職員本人にしてみればいきなり大金を準備できるわけもなく、しかし県の会計担当課からは早く返還させろと言われ、その板挟みになって長い期間苦しんだ記憶があります。
辛い思い出もたくさんありますが、よく31年間もやり過ごせたものだと思います。
高校の事務長という仕事は毎朝の打ち合わせと称して、業務開始の15分ほど前に、校長、副校長とその日の打ち合わせを行いますが、超過勤務手当は支給されません。
これは労働基準法に明らかに違反しています。
こういった風習を当たり前とみなして見直さないあたり、ややブラックな一面があります。
・獲得したスキル
事務全般を取り扱うため、社会保険や労働保険、給与所得税・住民税の知識を一通り知ることができます。
会計については各県や市町村で独特のやり方があるので、一般社会で通用するとは思えません。
地方公務員を20年間勤めると、試験なしで行政書士の資格を得ることができます。
ただし、本県の場合登録料と毎年の会費が高額であるため、あまり人気がないようです。
・学校事務に向いている人
当たり前のことですが仕事には期限というものがあるので、仕事を段取り良くこなせる人が向いています。
段取りが全てといってもいいでしょう。
学校事務は仕事の順番や段取りが自分の裁量で決めることができるので、自由度がある代わりに絶対的な期限があります。
期限の2〜3日前に完了させるぐらいでなければ、大量な業務をこなせません。
逆に、繁忙期以外は時間が余ることがあります。
いかにこの時間を有効に使って業務改善できるかが、その後の職務継続のポイントになります。
・早期退職について
残りの勤務期間10年というタイミングで早期退職しました。
理由は色々ですが、一つは毎年同じ仕事をこなし続けることに、ちょっと嫌気がさして時間のムダと思うようになったためです。
30代から何となく意識して蓄財するように習慣づけていましたが、結婚して、年齢が上がり、それなりに責任のあるポジションに就くようになると、仕事量も増えることとなりました。
体調不良も目立つようになり、このままでは良くないと思いました。
年収700万円を捨て去ることになりますので、多少迷いがありましたが、人生の残り時間の方がお金より大事と判断してのことです。
それまで積み上げてきた資産と、退職金を合わせれば老後も生き残れるという計算です。
働く必要はありませんが、自分の小遣い銭程度は稼ぎたいので、クラウドソーシングサイトで仕事をしています。