なるべく人とあまり関わらないで済むアルバイトを当時探していた私は、求人サイトで「洋服の補正スタッフ」というアルバイトを発見。
元々、モノを作ったりする事が好きで、手先も器用な方だったので早速応募することに。
メールで連絡が来たので、面接を受けに会社へ向かった。
現場は、雑居ビルの中にある中々古い構造のワンルームのような小規模の部屋だった。
そこにはハンガーに掛かった服で埋め尽くされたかのような空間の中に、山積みの書類と飲み残しの缶コーヒーで散乱されてある社長のデスクがあったのだ。
社長に履歴書を渡し、面接のような雑談をした後、「明日の昼、ランチへ行ってお話ししましょう」と最後に言われ面接が終了。
(果たして、これは合格なのか…?)と疑った。
翌日になり、社長ともう一人の男性社員(後になって知ったが、社長の甥だった)と私で、焼肉ランチへ。
まさかの自分で焼くスタイルの本格焼肉店だったのだ。
さすが男性、男社会なのか…?と感じながらも私は必死に焼肉を焼き続けた。
昨日知り合ったばかりの社長ともう一人の男性社員のために…。
私は何か試されているのかと怯えながらも、その焼肉代は奢ってもらい、会社へ戻った。
私はあの焼肉で合格し、今日からここで働かせてもらえるのかと勝手に思い込んだ。
なぜなら戻った途端、早速業務の指示が来たからである。
初めての業務は、スーツの袖のボタンを取るというものだった。
こうして、私は3ヶ月の間、週に4日6時間勤務で働いた。
この仕事は、結局3ヶ月しか続けられなかったが、逆に3ヶ月も続けられたと今となってはそう思える。
そんな私が体験した洋服の補正アルバイトのリアルをお話ししていく。
『洋服の補正アルバイトの良かったところ』
仕事内容は、単純作業というジャンルではあるが、自分にとっては非常にやり甲斐を感じていた。
職場のパートの方も優しく教えてくれる方ばかりだった。
はじめはボタン取りやボタン縫い付け、アイロン掛け担当だったが、2ヶ月を過ぎた頃から業務用ミシンを使ってパンツの裾上げを担当することとなった。
元々こういう事が得意な私は、細々とした作業に対しても集中力を切らさず、着実に業務を行うことができていたはずである。
良かった点は本当にこの部分のみである。
『洋服の補正アルバイトの闇』
いよいよここからが本題と言っても過言ではない。
私が体験した洋服の補正アルバイトのブラックな部分を包み隠さずお話ししていくつもりである。
もしこの部分がなければ、私は3ヶ月で辞めずに楽しく仕事を続けられていたのかもしれない…なんて思っていたが、ブラックだったのは社長自身だったので、私はこの職場から立ち去った。
では、その闇とは一体どんなものだったのか。
① 給料は手渡しで領収書記入、つまり個人事業主扱いだった
小会社の経営あるあるなのかもしれないが、このままもし続けていたら税金支払わなければならなかった。
確かに、面接時に何の契約書もなかった。
3ヶ月後に辞めて気付いたのは、きっと試用期間としてだったのではないかということくらいだ。
この事よりも問題だったのが、2ヶ月目は給料が出勤日数に対して3万円ほど少なく入っていた時のことである。
この職場はタイムカードが無い。
私のような試用期間者は、出勤表に自分で記入し、社長に提出しなければ給料がもらえなかったのだ。
この社長のデスクは整理整頓とは無縁の散乱さで、一言でいうと、汚いのだ。
私の出勤表は何処かへ紛れ込んでしまうのは当然のことであった。
私が社長に直接、「給料が少なかったのでもう一度ご確認していただけますか?」と訊くと、これまでの私に対する態度が豹変したのである。
私はどうやら社長のミスを指摘したことで、プライドを傷付けてしまったようだった。
② 社長から理不尽で陰湿なパワハラを受ける
その出来事以降から、出勤する度に嫌味を言われ続けるようになった私。
「若い女は黙って言う事を聞け」というような社長のポリシーを破った私と社長との戦いが始まる。
まず出勤時の挨拶。
他のスタッフは返事をしてくれるが、汚いデスクに座る社長だけは私の挨拶をこちらも向かずにガン無視。
15分程経って、私が居ることに今気付いたのかワザとらしく説教をする。
会社が閉まるのは基本的に19時で、私のシフト時間も19時までだった。
19時になる前に今日の業務が終わり、掃除をし始める。
これまでそれが当たり前のようにしていたが、ここで社長が現る。
「掃除は19時になってからしろ」と。
タイムカードが無いのはこの為かという事を知る。
サービス残業だ。
この日から、どんな事があっても19時になってから掃除をするようにした。
しかし業務が早く片付いた日には掃除を終えても19時過ぎで退勤できる。
社員が残る中、「お先に失礼します」と言い会社を後にした。
翌日の出勤で、男性社員(社長の甥)に説教を受けたのだ。
「先輩が残っている中で一人で帰るな。何か出来る事はありますか?と聞け」と…。
私はいつも出来る事が無いか訪ねて一応退社していたのだが、ここはそんな優しい職場ではなかった。
私の意見を聞く耳も立ててもらえなかったのだ。
『この闇バイトを通じて学んだこと』
こうして、この職場で働くことが嫌になってしまった私は、社長に辞める旨を伝え3ヶ月で退職した。
辞めた途端、失せていた食欲が回復するなど精神的にも安定した。
ここで得た補正のスキルは役に立つ時が出てくるだろう。
なるべく人とあまり関わらないで済むアルバイトは、その職場環境や人間関係を重視した上で見極める必要があることを身を持って学んだ。
そして、会社のトップの机が汚さは人格的にも問題あるということは法則的にも立証できるであろう。
なぜなら、従業員を大切にできてないという行動が垣間見えるからである。
私はあの社長の元で、社会人経験を積まなくて良かったと感じる。
私はこれからも自分の価値観が合う環境に身を置くことができるよう、またそんな環境創りができるような人間でありたいと、この社長が作った職場から離れて思うのであった。