・給料について
私は、保育園や高齢者介護施設、障がい者施設をいくつも運営している企業が、直接経営している企業主導型保育園で働いていました。
母体の企業は業界では大手と言われていますが、一般の保育園と同じく、保育園職員の給料は安かったです。
一般の大手企業で働いている人たちからすると、びっくりするような安さでした。
保育士も安いけれど、それ以外の職員、例えば栄養士や事務員はもっと安いように設定されています。
なぜなら、保育士から給料を上げてくれという要望が出た時に、経営者は「栄養士や事務員はもっと安い。彼らに比べたら保育士は良い方なのだから我慢しろ」と言い逃れができるからだと、私は思っています。
そして経営者のそういう対応は、現場で働く職員たちの関係をいびつにすると思っています。
給料の差で職種の違う人間同士が、お互いを差別するようになるのです。
・人間関係
給料に差をつけられたことによって、栄養士や事務員は保育士から自分たちより下の存在だと認識されます。
実際の給料の違いは、大企業で働いている人たちに比べたら、どんぐりの背比べ程度です。
大した差はないのだけれど、保育園という狭い社会の中で、保育士は自分たちのほうが給料が高いから優秀だ、栄養士や事務員は自分たちより給料が安いから劣る、という思考を持つようになり、それが言動に出て人間関係がギクシャクするようになります。
私は管理栄養士です。
四年大学を卒業し、難しいとされる国家試験に合格しています。
一方、保育士のほとんどは短大や専門学校を卒業したら無条件で保育士資格を取得できます。
私のほうがたくさん勉強して知識もあるのに、なぜ下に見られなければならないのか?
給料が彼らより安いことが原因です。
・転職へ
仕事の内容は、とてもやりがいのあるものです。
将来のある子どもたちの成長過程に関わっているということが、とてもやりがいのある仕事だと感じ、誇りをもっていました。
多分保育士もそうだと思います。
そして従来は優しく思いやりのある人たちなのだと感じています。
だから、会社のやり方に不信感を持ってしまい、私は六年働いたその保育園を辞めました。
次は職種の違う人たちとお互いに尊敬し合える会社で働き、くだらない人間関係で悩みたくないと考え、転職活動をやり始めました。
・結局、保育園
管理栄養士としての就職先を探し、高齢者介護施設や病院なども視野に入れて就職活動をしましたが、やはり子どもの成長に関わる仕事に魅力を感じました。
前職と同じような、企業が運営する保育園をいくつか見てみました。
その中に、保育士も栄養士も事務員も、どの職種でも給料に大差がない保育園を見つけました。
話を聞きに行くと、栄養士や管理栄養士は給食部門という系統の中で仕事の運営がされており、保育士とは別部門になっていました。
管理栄養士の免許をもっていたら、資格手当も付けられており、主任保育士と同程度の給料でした。
前職より給料が高いことはもちろん魅力的でしたが、何よりも保育士より低い身分だと思うような錯覚に陥ることがなさそうだ、と思えることが良いと思い、その会社の経営する保育園に転職しました。
そして現在、入社2年目です。
・仕事に対する思い
新しい就職先は前職の会社より規模は小さいけれど、小さい分、社長をはじめ経営陣の方々と意思の疎通がスムーズにできるし、毎月職場環境に対する意見やアンケート調査を実施しており、とても働きやすい環境の職場でした。
そして何よりも、園長や一般の保育士たちとお互いに尊敬の気持ちをもって業務に携わることができるようになりました。
どちらが上とか下とか考えることもなく、いろいろな職種の人間が、子どもたちの安全と成長を願ってより良い保育を行っていく、という保育園本来の子どもの保育に関わるすべての職種の人たちの共通する目標に向かって業務を遂行していける職場環境を得ることができ、とても嬉しいです。
給料が高いほうがもちろん良いです。
でも多くの保育園で働く人たちは、それだけではない、職業に対する誇りのようなものをもって仕事に臨んでいると思っています。
そうでなければ、ただお金のためだけでは、とてもじゃないけれど出来ない仕事がたくさんあります。
私は、保育園に携わるすべての職種の人たちがプライドを持てる職場環境を得ることができるように、ということを経営する企業に望みます。
それが日本の未来に役立つのではないでしょうか。
今の保育園や介護施設を経営している企業は、目先の利益の追求ばかりしているような気がしてなりません。
理想論かもしれませんが、今働いている会社は、少なくとも働いている人間が仕事に誇りを持てるような環境を作ってくれている会社だと思っています。
それが、働いている人間を大事にしてくれる会社、つまりはホワイト企業だと思います。
そういう会社が増えて、保育園運営をしてくれるようになると、日本の未来も明るくなるのではないでしょうか。