・販売職はしんどい
私が今まで数多くの仕事を経験したうえで一番印象に残っているのは販売職の仕事です。
結論から言うと販売職はしんどいです。
必ずと言っていいほど誰しもが一度は「自分には向いていない」と言うと思います。
年収は低いし、その低い給料から毎シーズン新しいお洋服を実費で支払わなければいけません。
毎月の収入は16万円程でした。
5万円程はお洋服代で飛んでいってしまいました。
さて、この世で一番何が難しいと思いますか?
生きていれば皆さん必ず同じ悩みに直面します。
それは何だと思いますか?
それは”人間関係”です!!
人と関わることがこの世で一番難しいと思います。
幼少期はあまり記憶はないと思いますが、おもちゃの取り合いでひともんちゃくありませんでしたか?
物心つく頃には人間関係で悩んだことはありませんか?
学生時代でも社会人になってもいじめや嫌がらせの問題はこの世から消えることはありません。
また、結婚しても価値観の相違が原因で離婚、子どもが生まれても子どもとのコミュニケーションが上手くいかず疎遠になる、親と上手くいかず二世帯で住む家族が少なくなってきました。
私の家庭も二世帯同居をしていましたが、私が物心つく頃には二世帯同居はとっくに解除されていました。
そもそも少子高齢化社会の火種になっているのはこの人間関係スキルがないことに問題があるといっても過言ではないと思います。
話は大きくなってしまいましたが、人と関わることは本当に難しいことなのです。
それを仕事にするわけですから余計に難しいというわけです。
そんなことも考えず憧れで入社した私はズタズタに心引き裂かれました。
でも、このショックがあったからこそ販売職を通して人と関わることはこんなにも楽しくて素敵なんだと気付くことができました。
まさに販売職の魅力でもあると思います。
・地獄からの転機
私が販売職を始めたのは19歳頃の時でした。
まだ社会人になって年数が浅かったのもありますが一つひとつの出来事がとても衝撃的だったのを覚えています。
初めて親や自分が知っている身内以外の人から叱られ、叱られた内容も理不尽なことでした。
見ず知らずの人に怒鳴られることはこんなにもつらいんだと知り、今でも何を言われたのか一言一句思い出せるほどつらい思い出です。
その日は家に帰る道中で我慢できずに泣いてしまいました。
ただ理不尽なことを言われたから泣いたのではなく「これから一生死ぬまでこういった人と関わって生きていかないといけないんだ」という絶望感からなる涙でもありました。
お客様だけでなく人間関係にも悩まされました。
私が勤めていたのは百貨店で、姉妹ブランドが近くの店舗にあったこともあり人間関係でうまくいかなかった場合は移ることも許されていました。
なぜか分かりませんが私は店長との相性がどうしても悪くよく人事を通しては陰で言い合いなんかもしていました。
私が勤めていたブランドはレディースのお洋服を取り扱っていたので販売員はすべて女性というのもあり、少しどろどろとしていたのもありました。
どうしても上司とうまく付き合っていけず、姉妹店に移ることになったのですが今思い返せばこの出来事が私にとって転機だったと思います。
移ってからの店長は洋服を売るというよりもお客様との会話を楽しんでいるように感じました。
毎シーズン届く進捗のお洋服のデザインやコンセプトをお客様に丁寧に話し、その中でもメインはお洋服ではなくお客様との会話でした。
洋服とはなんら関係ない話をしているのに店長の売り上げが坊主な日は一日もありませんでした。
自分のレジが開かない理由を他のせいにして「洋服が洗練されたデザインなら黙ってたって勝手に売れるでしょ」と思っていた私はハッとさせられました。
いくら洗練されたデザインだろうがその洋服が持つ魅力を販売員が生の声で伝えるからこそ、生産者側の意図や気持ちがお客様に伝わって特別なコディネートが出来上がるんだなとその時初めて気付いたのです。
伝えるのにはまずお客様との信頼関係が重要なんだと思い知りました。
信頼関係を築くのに一番大切なのは相手が何を求めているかを的確に見抜くことです。
相手の身なりはその人表現しています。
もし毛玉が付いていたり少し服がヨレていたらその人は洋服を大切に何年も扱っている人、もしくは洗濯する際に表記を見ずに洗うのがめんどくさがりな人、この二択に私は絞ります。
そして、お召しになっている物を訪ねてみてどっちのタイプかを推理してそれそれの提案をその場で考えて提示してあげます。
話している内容はなんだか推理しているように聞こえますが、人間関係において相手を推理することこそが難しい人間関係を打破する手段なんじゃないかと思います。
それから私は心理学を勉強するようになって店長まではいきませんが最初に比べて売り上げも上がり、接客することが好きになっていきました。
相手をよく見れば自ずと見えてくる答えがあります。
ひとつ言えるとしたらこれを読んで「よくある話だよね」と終わらせてしまう人、経験した人しか絶対に分からないことがあると思います。
財産や地位より”経験”です。