職業名 理容師
雇用形態 正社員
勤続年数 6年9ヶ月
入社時の年収(ボーナス、インセンティブ含む) 170万
退職前の年収(ボーナス、インセンティブ含む) 180万
性別 女性
私は20代の頃、約7年間、理容師として働いていました。
しかし、その経験は決して順風満帆なものではなく、むしろ「ブラックな仕事」として強く印象に残っています。
理容師としての仕事そのものにはやりがいを感じていましたが、職場の環境や労働条件は、私にとって厳しく過酷なものでした。
今回はその体験について振り返りたいと思います。
・下宿生活とプライベートの制限
私が働いていた理容室は、家族経営の個人店舗で、実家から電車で2時間程度離れた場所でした。
そこの家族兼店舗に住んでいるお家の方々と一緒に生活をさせてもらっていました。
この下宿生活もまた、プライベートな時間を削る要因の一つでした。
下宿先では共に家事の分担をしなければならず、本来なら仕事である理容師業務とは関係ない作業をしなければならないこともしばしばありました。
仕事以外の時間でも完全に自分の時間を持つことが難しかったのです。
特に仕事が終わった後や休日に、少しでも自分のリラックスできる時間を持ちたいと思うことも、理容師の仕事の中では非常に難しいものでした。
・長時間労働と過酷な練習時間
理容師の仕事は、朝8時半から夜7時半まで、約11時間の勤務が基本でした。
忙しい日は休む暇もなく、お客様が来店するため、お昼休憩を取る時間もなく働くことが多かったのです。
しかし、それだけで1日が終わるわけではありません。
仕事が終わった後に、更に夜12時までの練習が待っていました。
技術を向上させるには練習が欠かせないことは理解していますが、体力的にも、精神的にも限界に近い状態での練習は非常に過酷でした。
この夜遅くまで続く練習時間は、若い理容師にとって当たり前のこととされていました。
上達しなければ一人前になれないというプレッシャーの中、仕事が終わった後の限られた時間を練習に費やすことが求められていたのです。
しかし、これでは休息の時間がほとんど取れず、疲れがどんどん溜まっていきました。
・休日の勉強会と追加の負担
さらに、休みの日も完全な休息とは程遠いものでした。
職場のマスターの奥さんが修行していたお店で、毎月勉強会が開催されていました。
これも一見、技術向上のためのありがたい機会のように思えますが、実際にはそうではありませんでした。
この勉強会には、自分の給料から毎月5000円を支払わなければならず、しかも強制参加でした。
たまにしかない休みを利用して勉強会に参加するのは、肉体的にも精神的にも大きな負担でした。
休みの日さえ自由に使えず、常に仕事のことを考え続ける生活は、私の体力だけでなく、モチベーションも低下させました。
・低賃金と不安定な労働条件
理容師としての給料は一ヶ月14万ほどでした。
当時の私には、この給料で生活していくのは決して楽な生活ではありませんでした。
仕事で使用するハサミやクシ、カラーリングのカップやドライヤーなども自己負担、下宿先の部屋代や生活費、そして前述の勉強会費用を差し引くと、手元にはほとんどお金は残りません。
また、福利厚生もなく、国民年金を自分で支払わねばならない状況でした。
社会保険や健康保険といった基本的なサポートがない職場では、将来の生活や健康に対する不安が常につきまとっていました。
このような低賃金かつ不安定な労働条件の中で、長時間労働や休日の勉強会といった負担を背負い続けるのは、心身ともに疲弊していくものでした。
理容師という職業に対する情熱はありましたが、将来の展望が見えない状況では、続けることが難しいと感じるようになりました。
・理容師としての未来が見えなかった
7年近くこのような過酷な環境で働き続けた結果、私はこの仕事に将来性を見出すことができなくなっていました。
理容師としてのスキルは確かに向上しましたが、労働環境の改善が見込めず、将来の安定性も感じられない状況では、モチベーションを保つことが難しくなっていました。
20代という若さもあり、他の職業に転職する選択肢を考えるようになりました。
理容師の仕事に誇りを持っていた反面、自分の生活や将来を犠牲にしてまで続ける価値があるのかという疑問が頭をよぎりました。
最終的に、私は約7年の理容師生活に終止符を打ちました。
辞めた後は、新たな道を模索し、自分の人生にとってより良い選択をすることが出来ました。
理容師という仕事は、人の外見を美しく整える素晴らしい職業です。
しかし、その裏には、私のように過酷な労働条件に苦しむ理容師も少なくありません。
私の経験がこれから理容師を目指す方や、同じような悩みを抱えている方の役に少しでも立つことを願っています。
そして労働環境の改善が、理容師業界全体に広がっていくことを心から望んでいます。