職業名 介護職
雇用形態 契約社員
勤続年数 6年
入社時の年収(ボーナス、インセンティブ含む) 200万円
退職前の年収(ボーナス、インセンティブ含む) 200万円
性別 男性
【就職氷河期とブラック業界】
いよいよ本格的な就活時期を迎えた時の話。
某福祉大学(4年制)に進学していたが特に福祉系の仕事を志すことはなく、当時の私は一般企業に勤めることを目標に頑張っていた。
さて、今では考えられないかもしれないが、当時の就職市場は買い手優位。
要するに求職者が選んで就ける仕事が非常に少なく、人があぶれている状態だった。
しかし、そんな状態であっても、常に人手不足の業界、業種というものはある。
その一つが、当時有効求人倍率が5倍以上で推移していた介護の仕事だった。
因みに有効求人倍率とは【有効求人数÷ 有効求職者数】で求められる数字で、簡単にいうと有効求人倍率が1以上の場合、求職者数よりも求人数が多く、人手不足の状態。
反対に有効求人倍率が1以下なら、求人数よりも求職者数が多く求職者が余っている状態。
有効求人倍率が5倍以上ということは、1人の求職者に対して5社以上の求人がある状態ということである。
ブラック企業という言葉がまだまだ世の中に浸透していない時代。
漆黒よりも黒く深い闇がはびこる業界の一つが、当時の介護業界だったと思う。
【就活失敗と漆黒の高齢者施設】
さて、話は戻るが「絶対に第一志望の業界に就職してやる!」と意気込んでいた当時の私だったがその願いは叶わず、4年生の2月になっても仕事が決まらない状態になっていた。
流石に焦りまくった私。
方々に頼み込み、大学時代の先輩の紹介で何とか特別養護老人ホームの介護職に滑り込んだ。
正直良いイメージがない職種だったが、当時の私には他に選択の余地がなく、背に腹は変えられなかった。
新卒だったが、資格もなく知識もほとんどない状態だったので契約社員での雇用。
とはいえ、常に人手不足の高齢者施設。
無資格だろうと知識がなかろうと、一刻も早く一人前の仕事が出来る職員になるよう求められていたので、研修などはおろか、仕事内容の説明もろくにないまま、入社初日からいきなり実務がスタートした。
前述したとおりブラック企業という概念がまだまだ浸透していない時代。
今なら確実にパワハラに抵触するであろう上司からの罵詈雑言、叱咤激励の中、なんとか仕事を覚えた。
また、上司からの強い叱責だけではなく、認知症の利用者から唾を吐かれたり、いわれのない悪態をつかれる日々。
現在ではだいぶ改善されてきた介護職の給与だが、当時の私の手取りは夜勤手当を入れても13万円程度。
一日12時間勤務という日もあり、休日も当たり前のように呼び出されるような職場だった。
日々募る過度なストレスと、少ない給料に私の精神はかなりまいっていたが、そんな中でも良いことはあった。
女性が多く、忙しい環境ということもあり、出会いのない職員が多くいたのである。
そんな状況なので、容易に好みの女性と付き合うことが出来たし、正直な話、当時割とモテた私は複数の女性と大人の関係を持っていた。
ストレス発散も兼ねてか、夜はかなり激しい女性ばかりで…。
【国家資格取得と限界を超えた自分】
と、危うく話が脱線しかけたが、そんな過酷な職場環境に勤める中でも希望はあった。
国家資格を取得すれば、正職員として採用すると入社時に施設長が約束してくれていたのである。
試験自体はかなり簡単だったが、当時は実務経験が必要だったため数年経験を積んだ後、ストレートで介護福祉士を取得した。
しかし、ようやく、正職員になれると思っていた矢先の契約更新時「引き続き、契約社員として。」と施設長に言われ、約束を破られたことに憤慨し、我慢も限界を超え、絶対に辞めてやると決意を固めたのを覚えている。
また、他にも私のような職員が複数人いた為、団結して一斉に退職しようと示し合わせ、その意向を同時期に施設長に伝えた。
ようやく事の重大さに気づいたのか、慌てた様子で「すぐにでも正職員として雇用したい。」と申し出があったが、時すでに遅し。
崩れた信頼関係は取り戻せず、私を含めその後10名近くの職員が一斉に退職した。
当時から職員が不足しており、シフトも綱渡り状態で作成していたはずなので、事業に影響がないわけがない。
風の噂だが、当時の施設長は責任を取らされ、辞めさせられたと聞いた。
私はと言えば、景気がようやく上向いてきた時期だったこともあり、第一志望の仕事ではなかったが、介護とは違う福祉系の仕事に再就職できた。
【介護業界はブラック?】
現在では、私が勤めていたような施設や法人も段々と駆逐され、淘汰され始めているが、業界全体の問題は相変わらず多い。
例えば待遇の問題。
他の産業と比べても、まだまだまだまだ給与の水準は低いし、年間休日も少なく有休も本当に取りづらい。
高齢者の身体や財産、生命を守る大切な仕事のはずなのに、上記のように冷遇していれば介護を志す人が少ないのは当然だと感じる。
一方で待遇など関係なく介護の仕事を楽しんでいる人がいるのを見てきたのもまた事実で、志のある人にとっては本当にやりがいのある仕事なのだと思う。
「介護」と聞いて社会貢献性の高い、やりがいのある仕事とパッとイメージできる人はもしかしたら介護職に向いているのかもしれない。