『掃除の仕事は楽だろう』
働く=人間関係だろ。
人間関係=もう嫌。
こんな考えしかできなくなってた時期に、頭に浮かんだ仕事が掃除でした。
掃除なら年配の方しかいなそうだし、誰もしたくない仕事だからすぐ面接も受かって適当にやれば稼げる。
そう思って掃除の仕事の面接を受けることにしました。
掃除は掃除でもいろんな掃除がありますが、私は旅館の清掃員の面接を受けました。
もともときれいな館内だし~ぐらいに考えていましたが、ふたを開ければ・・・。
とにかく忙しかった。
腰は痛くなるし手はガチっと凝り固まるし、肩は凝るし、なによりお客様の部屋の使い方が汚すぎて最初のうちはイライラしていました。
「こんなに一泊で汚せる?」こんな気持ちになることがほぼ毎日でした。
掃除なんて楽だと思ってたのにー!お客さんとも話さなきゃいけないじゃんー!でした。
『人から逃げたい私が』
でもイライラの毎日から気づけば変わってた自分がいました。
「汚しまくるってことは、お客様はゆっくり過ごせてる、リラックス出来てるってことなのかも。ん?お客様の事考えてる私」
いつの間にか人から逃げないで考えるようになっていました。
たぶん掃除という仕事をしながら人のために働く、尚更、見ず知らずの人が汚したところをきれいにするってことが人に慣れるってことにつながる行動になってたのかなって思いました。
ここまではプラスになっていましたが、でも労働量は本当に体にずしっとくる仕事なのでつらかったです。
そして雇い主は掃除未経験なのでこのきつさを理解していないところがもう一つの問題点でした。
『最低賃金のイメージでしかない掃除の給料』
先ほど雇い主が掃除のきつさを理解していないのが問題だと言ったのですが、そこが給料を考えることへつながりました。
もちろん世間的にも安くて当たり前。
仕事内容も誰でもできる仕事。
仕事時間も、だいたいが朝早いわけでもなく、夜遅いわけでもない。
安くて当然。
とは分かっていますが、旅館の清掃となると、「お部屋に髪の毛一つでも落としていちゃいけない」
このレベルが当たり前なので毎日毎日精神がすり減る思いでした。
大げさに聞こえますが。
精神もですが体力的にもきついです。
10部屋一人でチェックアウト午前10時からチェックイン午後3時までに仕上げなければいけないので大変でした。
時間だけ聞くと「え?そんなに忙しそうじゃないけど」って思われると思います。
しかしちょっとだけ想像していただけるとなんとなくわかると思うのですが、
大浴場、男性女性合わせて30分。
一部屋トイレ掃除を3分で行ったとして10部屋あると最低30分かかります。
掃除機5分かけたとして10部屋で50分。
ふすまのレールをふく、窓、窓のレール掃除、などなどすべて10部屋あると一部屋にかかった時間×10倍になります。
そうなると午前10時から午後3時までに、細かく言うとお客様は早めに来る方もたくさんいらっしゃるので午後2時までにはこの内容を一人でやらなくてはいけないので仕事内容は簡単なのですが、結構な量だと思ってしまうんですよね。
そうすると何が気になり始めるかというと、給料ですよね。
でも最低賃金というのも理解できる。
ここでの葛藤がどんどん強くなり退職を考え始めました。
『でも頑張れていた理由』
これはただ一つ、お客様からのレビューでした。
「お部屋が本当に奇麗でした。髪の毛、埃一つ落ちていないのにはびっくりでした」他にも抜き打ちチェックのような覆面調査のかたもきていたようなのですが、そちらのかたからも
「テレビの後や、絶対ここは埃あるだろう。というような高いところも奇麗に掃除されていてびっくりしました」
などのお声を聞くと本当に頑張ることって大事。
うん。
って思え5年続けることができました。
『人から逃げるための掃除がいつしか人のために、そして会社での人間関係もすんなりと』
今は退職を前提に休職中ですが、人間関係で辞めようとは一回も思わなかったぐらい良い会社でした。
フレンドリー、こんな言葉があうような、よく求人サイトでみかける「アットホームな職場です」こんな感じでした。
全国からいろいろなお客様に来ていただき、掃除もですが、お料理の事、仲居さんの接客である予約時点での聞き取り、お迎えからお見送りまで、その後の接客も含めおもてなしがすべての仕事なのでみんな分かり合い助け合うことができていたのだと思います。
なかなかこのような会社は少ないほうだと思うので、次、私がほかの会社に勤めることがあったときは、こんな会社の雰囲気作りを自分ができるように、作っていけるように生かせればなぁと考えています。
言い方が悪く聞こえてしますかもしれないのですが、他人のことに一生懸命になる事って、どこの会社に勤めても。
生きていても大切なことだと思います。
旅館にお泊りに来てくださるいろんな方と出会いそれが楽しい、良い経験だと思える方はきっと一度経験すると面白い職業だと思います。
人から逃げての掃除、でしたが私には人に出会うための掃除になった貴重な体験でした。