アルバイト採用も流れ作業
昨年の夏、パン工場に2週間ほどバイトに行った。
製造アシスタントの仕事。
そのバイトが決まるまで、いつくか他のバイトに応募していたが、年齢のせいか、ことごとく不採用で、ここもダメかもと思って、軽い気持ちで応募してみた。
他の会社だと、担当者が不在とか、後日連絡とかが多かったけれど、そのパン工場では採用担当が電話口に出て、面接会があるので、今日来れないかとのこと。
もちろん二つ返事で承諾し、面接会へ。
自宅から40分くらいのところにあるパン工場。
車で通るときに大きな看板はよく見ていたけれど、中に入るのは初めて。
採用担当から電話で教えてもらった通り、守衛のところで、バイトの面接に来ましたと言うと、入館証を渡されて、駐車場を案内された。
いつものことなのか、守衛のおじさんも、怪しむこともなく、淡々というか、そっけない対応。
入口に入ると、無数の下駄箱にシューズが並ぶ。
履き替えが必要らしく、迷いながらも、一つ選び、面接会場に進む。
10人ほど座れる部屋に机とイス。
すでに3人ほど座っていて、予定の時間になるころには、8人に。
担当者が出てきて、就業内容の説明を書いた紙を渡し、名前を呼ばれたものから、別室で面接するとのこと。
採用担当は3人ほどいて、次々と呼ばれて出ていく。
このような面接会を頻繁にやっているようで、流れができている。
人の出入りが激しいのだろうなと想像。
個別面接も就業内容の確認と、こちらの意思の確認で、あっけなく採用。
なんと、明日から出てほしいとのこと。
ことごとく不採用だった身としては、大変ありがたかった。
道具になったような気持ちに
工場だから仕方がないのだけれど、非常に細かくルールが決められている。
車の駐車する場所、靴を脱ぐ場所、身だしなみ、制服の下に着るTシャツの色、靴下の色、マスクの付け方、帽子のかぶり方。
できていないと、生徒に注意する先生のように、それ、ダメと叱られる。
仕事も流れてきたパンにナッツを振りかける、パンを重ねる、カゴに並べるなど単純な作業。
ただ、コンベアーのスピードに合わせなくてはならないので、自分も機械の一部になったように、作業することになる。
誰でもできる仕事だから、誰でもいい仕事。
きつい仕事ではないけれど、とにかく単調で、時間が経つのが遅い。
そのくせ、ぼーっとできない。
バイトを指導する社員が現場にはいるけれど、マスク、帽子をお互いしているので、表情も見えず、声もききづらい。
名札はつけているが、名前で呼ばれることはなく、バイトさん、これやって、あれやってと無数にいる一人という役回り。
まあ、それがバイトと言ってしまえばそうだけれれど、なんだか、道具になったような気分になる。
作業内容、作業現場は出社時にその日のバイトの人数などで決まるようで、同じ場所に続けて入ることは少ない。
だから、バイトを迎える現場の社員もバイトをいちいち覚えないし、育てるつもりもない。
こっちも自分の都合のいいシフトで出社できるので、仕方がないのかもしれないが、2週間の間、仲良くなったバイト仲間も社員もいない。
ただ、道具として、その場その場で働くだけだ。
怒鳴って帰ろうかと思った
今まで、そんな顔の見えない、道具のような仕事はしたことがなかったので、毎日が苦痛。
現場ではあいさつや、雑談も一切ない。
ただ、作業の指示があるだけだ。
社員もバイトを道具として見ているから、使えない道具には腹が立つのが当然。
一度、カゴの中に、製品を決まった数詰めるという作業で、間違えてしまい、若い女性社員に手ひどく怒られた。
ろくに説明もせず、わからなかったら言ってと言われても、初めての作業なので、一度言われたくらいでは全部が飲み込めるはずもない。
こうしなさいって、言ったよね!と怒鳴りながら、こちらの作業の修整をイライラしながらしている。
非常にみじめな気分になったし、なんでそこまで言われなければならないのかと、腹も立った。
こちらだって人間。
雑に扱われれば、腹もたつ。
次言われたら、初めての人間にそこまで言う必要があるのか!と怒鳴って帰ろうと思いながら、作業した。
幸か不幸か、その後は失敗はなく、実行には起こさず終了したけれど。
食事と社員価格のパンは魅力
働き始めて3日もせずに、最初に決めたシフトの期限である2週間経ったら、二度とやらないと決めた。
そんな職場だけれど、気に入っていたところもある。
それは、300円程度で利用できる食堂。
味もよく、ボリュームもあって大満足。
持ち出しは厳禁だけれど、食堂内ではパンも無料で食べることができる。
あと、出社時にはその日作ったパンを土産でもらうことができる。
そして、工場内にある売店では100円以下で食パンや菓子パンが売っている。
普通のお店で買う値段の半額以下。
これは大いに利用させてもらった。
職場ではまともに話をしなかったけれど、売店の店員さんとは、笑顔で話せていたのが救いだった。