学校・保育・教育の体験談

海外の日本人学校で非常勤の美術教師をした体験談

投稿日:2021年3月2日 更新日:

私は数年前にヨーロッパのとある国で、一年間だけ日本人学校の非常勤講師として主に美術を担当していた経験があります。

その時の体験談をメリットデメリットを含めて、自分の体験の中からお話していきたいと思います。

 

ー就職のきっかけは人づてー

外国でお仕事をする際に、特に現地の人とお仕事をしたりする際にとても有利なのが人づて、紹介、というのがあります。

コネを使って就職、なんていうと、時に人は卑しいという感情すらもってしまうものかもしれません。

しかし日本人が異国でお仕事を得るために、コネクションをもっているというのは最大の武器といっていいのではないかと思う程生活面でも大きな役割を果たすのです。

当時私は本業としてフリーランスでほかの仕事をしていたのですが、たまたまその時期はとても暇があり、生活資金を稼ぐにはもう少しお仕事がほしい、と思っているときでした。

現地の友人で日本人学校で働く先生とつながりがある方がいて、丁度そのとき学校の芸術クラスのような枠で美術を教えられる人材を探している、という話を聞き、私自身は日本人なのもあってわりかしすんなり話が進み、非常勤の美術教師としての雇用をしていただくことに。

短期的で正式な公務員枠でもないので、経験者という件でフリーランス契約をさせていただきました。

 

ー学校のクラスでのことー

教室には日本人の子ども、10代前半の男女が十数名いました。

幼いころに両親の仕事の都合でその国に渡航し生活をしている子どもが多く、日本語ネイティブの子はほとんどでしたが、中には現地生活が長くて日本語話者としてのレベルが年齢よりも大分遅れている⁽現地の言語の方が上達している⁾子どももいました。

授業は基本的には日本語で行い⁽母国語の維持、という観点からできるだけ日本語オンリーの授業をもとめられていました⁾、日本の文化にもたくさん触れられるように、期間期間でお題になるものは日本の美術に関連付けされるものが多かったです。

週に二回程、二つのクラスを受け持って、もう一人の先生と実技をメインにした展開でした。

ーこのお仕事を経験して良かった点ー

日本国籍を持った子ども、日本への愛着心の深い子ども⁽ホームシックまではいかずとも、日本をとても恋しく思っている子は多かったです⁾、逆に日本で産まれたけれど殆どの人生を外国で暮らしていたりで日本の事をほとんど母国として認識しない子ども、言語の隔たりや混ざりのある子ども、個人個人の個性や性格以前に、アイデンティティの部分でも興味深い子どもたちに囲まれ過ごす時間は、教えるクラス以上の興味深さや考え深いものを得られることができました。

日本語を教える、という事はしませんでしたが、私が子どもたちに現地の言葉や言い回しを教えられることも多く、会話を通して文化の違いや背景をたくさん学べる事ができました。

たいていの生徒が自分の気持ちでそのクラスに臨んで出席しているので、授業中のトラブルや不穏な空気というものは一切なく、私自身も自分の制作活動に繋がる経験として糧になるものが多く、とても良き経験となりました。

子どもならではの感覚をたくさん見られましたし、考え方や発想は非常に貴重で有難いものだと感じています。

 

ーこのお仕事を経験して悪かった点ー

「悪い点」という言葉を使ってしまうと語弊がありますし、私自身兎角悪いと感じたことは無かったので、もしかしたら自分のいた環境やシステムがとてもラッキーなものだったのかもしれませんが、あえてネガティブ要素を出すとしたら、という事で書いていきたいと思います。

まず、授業の展開は授業中に全て完結するわけではなく、内容を設定したり時間を考えて構成していく部分はそれこそ学校にいない時間にやる方が多かったかなという感じがします。

私自身の癖によるものかもしれませんが、自分の本業は描くことが多いので、四六時中ネタ集めをしたりする行動が通常なんです。

なので、家にいるときも、お休みの日も、いつもなにかしら考えたり思いついたものを書き留めているので、その影響で、授業に使えるものをリストアップしたり、ネタとしてつかえるものを考えたり資料を集めたり制作したり、子どもたちにいかに興味をもって、楽しんで取り組んでもらえるかを考えながら小物など用意したり、学校でのクラス以上に時間をかけ、時にはお金もつかっていた気がします。

それは全てのちのちの自分の仕事に繋がって良い影響となっているので悪い点としてあげるのは違うかもしれませが、言い方を変えればその仕事の為に出費がある=収益が結果として減る、となるのである意味ネガティブポイントかなと思います。

では準備をしなければいいかというとそういうこともなく、授業展開のためには何かしら準備⁽それをお金ととるか時間と捉えるかはその人次第ですが⁾は必要なのです。

そしてその準備に対する金銭的対価はゼロなのです。

時間を割く、という所だけでみたら、自分の生活の中でうまく管理ができないと働いた時間と対価が比例していないという気になってしまうのが難点かなと思います。

 

ー教師としてのお仕事を通して感じたことー

個人の学習塾やお稽古事としての経験はあったのですが、学校という場で教師という立場を体験したことは、今までにない体力的にも精神的にも大変な経験でした。

色々な規則や人間関係や物事の流れが個人のものより多かったりシステマチックな部分があるので、考え方で面倒だったり忙しく疲れる仕事かもしれません。

しかし私には本業への影響や糧になるものが多く、あんなに様々な子どもとの関わりはこれまでもこれからもきっとあの一年だけだと思うので、最高に貴重で良い経験をさせてもらったと感じています。

コネクションは人生を豊かにする大きな武器です。

これからも回りの環境に有難さを感じつつ、人との繋がりにも感謝して教師、という仕事にはより一層の敬意を払って過ごしていきたいと感じる出来事でした。

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